再生への備忘録37

 我が家には二匹の犬と六匹の猫がいますが、仕事場には数十万匹のミツバチと、二匹の山羊もいます。生き物に囲まれて生活するのは、私達家族にこれ以上ない幸せをもたらしてくれますが、時々問題も起こります。昨日は愛犬ジミが脱走し、数百メートル離れたところにある用水路に滑落して、ヘドロの中で溺れかけていたところを魚屋さんに発見され、急いで救出に向かいました。

 子育てや養蜂や、会社の経営にも言える事ですが、常に意識が向いていないと相手は必ず問題行動を起こします。まるで「私にもっと意識を向けてください」と言っているかのようです。自分の現実は全て自分の意識が創っています。

 前を見れば前が創られ、後ろを見れば後ろが創られます。見るから見えるのであり、聞くから聞こえるのです。見えないのは見ようとしないからです。与える事を意識すれば循環の世界が創造され、得る事しか意識できなければ、搾取の世界が創造され、自分は搾取の世界に身を置く事になります。

 楽しみにしていた、年に一回の娘の合宿コンクールをキャンセルしてジミを無事救出し、ヘドロだらけになった体を洗ってやって、我が家はいつもの日常に戻りました。

再生への備忘録36

 晩秋になると、蜂場の至る所で盗蜂が起こります。盗蜂というのは、強群のミツバチが、弱群のミツバチのコロニーを襲って貯蜜を奪うという現象です。

 盗蜂というのは実に厄介で、蜂場の中で、AからB、CからDと蜜が移動しているだけで、蜂場のGDPは全く増えないどころか、盗蜂で起こった蜂群同士の戦争で多くのミツバチが犠牲になったり、最悪いくつかの蜂群を失う事になります。また、一度「盗む」味をしめた蜂群は、盗蜂癖が付き、次から次へと盗蜂を繰り返します。盗蜂癖はなかなか治りません。

 ところで、「純粋理性批判」という、カントが書いた難しい本がありますが、カントは自身の平和論を語る中で、ミツバチの盗蜂を引き合いに出しながら、こう語っています(少々文書を変えています)「盗蜂という現象は、人間間の戦争のように、他民族を併合して自らを増強しようとするのではなく、策略や暴力を用いて、他の蜂群の労働の成果を自らの為に利用しようとするものである」と。

 一方、私の目に盗蜂は、併存したミツバチの国家の富が自然淘汰によって均一化され、また、蜂場の巣箱が適正群数に向かうための単なる自然現象にしか見えなかったりします^_^

再生への備忘録35

 毎週水曜日は「はぁもにぃ養蜂部」の活動日。昨日の活動には、私たちの活動を一緒に体験して、はちみつを通して福祉活動を社会に発信していきたいという男性2人が、横浜からはるばる海を越えてやって来てくれました。普段は横浜みなとみらいでスーツを着て働いている、「普通のおじさん」です^_^

 昨日は、台風で転がって汚れてしまった巣箱の蓋や、蓋が飛んで雨水が入り、ミツバチが全滅してしまった巣箱をガスバーナーで焼いて炭化させ、虫が湧いたりカビが生えないようにリフレッシュして、来年のシーズン備えるという、地味ながらも大事な作業をしました。

 顔や作業着が炭で真っ黒になって1日の作業が終わり、ボランティアで来てくれたおじさん2人に部員一同お礼をした時、珍しく海の向こうに綺麗な虹がかかりました。

 ところで、台風15号で被災した後から、私は、自分が得る事よりも、自分以外の誰かに与える事を優先して動いている人と出会うようになりました。見返りを期待することなく、自分以外の誰かに与え続ける事で、社会に幸せの循環が生まれ、いつかミツバチのような成熟した社会が実現すると信じられるようになった気がします。

再生への備忘録34

11月も中旬に入り、朝晩冷え込むようになって、蜂場にやってくるスズメバチもめっきり少なくなりました。
昨日は少し風がありましたが、スズメバチ防御用のネットを外し、全ての群を内検しました。

坊ノ内養蜂園の蜂場のミツバチには、大きくイタリアン(オーストラリア)とカーニオラン(スロベニア)という2種類の血統がありますが、その他に、雑種交配した「ミックス」も存在します。地理的に離れた2つの血統を自然交配させ、群に遺伝的多様性を持たせる事は、これからの環境変化に対応できる「強い蜂」を作ってゆく上で大事なテーマだと思っています。ところで、一昨年に導入した純血のカーニオラン群は、今回の台風15号と、その後にやってきたオオスズメバチの攻撃で全部ダメになっていまいましが、雑種交配第1世代の女王の群(写真)は、なんとか生き抜いて現在4枚群。産卵圏に乱れなく、貯蜜も十分あり、このまま越冬させます。

被災以降続いていた深い霧も少しづつ晴れて来ました。

再生への備忘録33

昨日は玉川大学のミツバチ科学研究室を訪問して、養蜂場や研究室を見学させてもらいました。キャンパスがある豊かな里山の一角に作られた養蜂場は大学の研究機関だけあって、様々な工夫がされており、とても勉強になった次第です。
ところで、玉川大学に限らず、大学というのは基礎研究をする場であり、そこで学術的に研究された知見は、我々一次生産者や民間企業が現場で応用して初めて、研究が生かされます。
しかしながら、現実的には、基礎研究が先行して、応用研究に発展するというよりはむしろ、はじめに現実の問題解決という目的がまずあって、そこから基礎研究が始まり、その知見のフィードバックが、さらに応用研究を発展させてゆくという、現場と大学との相互作用が、業界の発展のための推進力を生み出してゆく気がします。
秋晴れの昨日は、玉川大学の学園祭と重なり、学生さん達の若いエネルギーを浴びて、リフレッシュできました。
また明日から新しい気持ちで、冬越しの準備に専念したいと思います。

再生への備忘録32

今日は、造園家でランドスケープデザイナーの山本紀久先生のワークショップに僭越ながら参加してきました。
以前の備忘録でも書いた通り、養蜂家の仕事は環境作りで、植樹や剪定の基本的な技術や、自然の森作りや里山活動の基本を知らないと自分のビジョンが具現化しません。
午前中は、まずモミジやトサミズキ、常緑のセコイアを使って、透かし剪定や樹形再生について実践的に学び、自然樹形に相似した樹形になるような剪定や里山環境の保全に焦点を当てた維持管理の仕方を学びました。
後半は、森の中に入って、森づくりの基本となる刈り出しをしながら、バイオネストを作りました。バイオネストというのは、剪定枝や落ち葉などで作る「生き物の巣」で、伐採した木々の処理と資源循環になるだけでなく、野ウサギや昆虫などの住処となって、森に生物多様性を生み出します。
最後は株立のウバメガシの株元を透かし、風景に奥行き感を出す技術を体感して、ワークショップが終了しました。
山本先生のワークショップは、自然環境や生き物に対しての愛が溢れていて、1つ1つの技術に深い意味があり、とても勉強になりました。

再生への備忘録31

蜂場の周辺を散歩していたら、石蕗(ツワブキ)の花が咲いていました。
石蕗は、キク科の宿根草で、日陰に鮮やかな黄色の花を毎年咲かせるので、庭木の株元に植えたり、グランドカバーにすると、日陰の庭がパッと明るくなります。思わず花の匂いを嗅いだところ、とてもよい香りがしました。
匂いに色があるとすれば、石蕗の花は、まさしく「黄色」の香りです。
ところで、光沢のある丸い石蕗の葉を見る度に、私は自分の母親を思い出します。子供の頃、指に棘が刺さると、母が何処からか石蕗の葉を取ってきて、それを棘が刺さった指に巻いてくれました。どういう理屈かわかりませんが、翌日には棘はすっかり指から抜けていました。
ちなみに石蕗はミツバチにとっても魅力的な花。積極的に増やしたい山野草の1つです^_^

再生への備忘録30

「与えるものが、与えられる」という原理原則については、以前の備忘録で書きましたが、これは、50歳を目前としたいま、もっとも重要なテーマになっています。「与えるとは何か」という事です。与えるとは、「与えない事をしない」という意味なのか、あるいは、「奪わない」という事なのか、自分の中で、そこをしっかりと定義できなければ、行動に結びつく事は永遠にありません。
そんな事を毎日考えていたら、黒柳徹子さんの「与える事は、奪う事に繋がる」という言葉に出会いました。文脈通りに読むと矛盾しているようにも見えますが、一瞬にして腑に落ちました。
子育てにも言える事ですが、親は情操教育のつもりで、良質な玩具を与えたとしても、それは子供自らがおもちゃを創って遊ぶ独創性を奪う事になり、また、子供に数学の解き方や社会の仕組みを教える事は、子供自らが自らの力で学ぶ機会を奪う事になります。また、薬を与えたり、転んだ時に手を差し出す事が、生きる力を奪う場合もあります。誰かに何かを与える時は、それが誰かから「本質的な何か」を奪っていないか、よく考えなければなりません。
ところで、これを養蜂に置き変えてみると真実が見えてきます。巣箱の中に何も与えず、巣箱からは何も奪わない。養蜂家はただ、環境作りに徹するという、一見極端とも言える行動は、養蜂家に何を与えてくれるのでしょうか。ハチミツやお金などの実利的な何かなのか、貢献感や神の祝福といった、抽象的な何かなのか。
それは改めて考察してゆきたいと思います。

再生への備忘録29

ミツバチは、巣箱を中心として半径約2キロの範囲を生活圏としています。養蜂家のすべき事は、その圏内を緑化し、一年を通じて蜜源や花粉源となる草花や樹木を増やしてゆくことに尽きます。環境依存型の養蜂から、環境創出型の養蜂にシフトしなければなりません。
蜂場から直線距離にして数百メートルの畑の隅っこにコスモスが咲いていました。コスモスは、秋の大切な蜜源であり、花粉源でもあります。
日没前だというのに、我が社の従業員達は、花から花へとせわしなく飛びまわっていました。そろそろ長い冬がやってきます。

再生への備忘録28

仕事の帰り道。巣箱を積んだトラックを走らせていると、県道沿いに一列に植えられているクロガネモチが目に入りました。クロガネモチは、養蜂家なら誰でも知っている優良蜜源樹木で、ハチミツは風味か良く、見つけると嬉しくなります。特に、秋が深まるこの時期に付く赤い実は可愛らしくて、すぐに車にスマホを取りに行き、撮影したのが下の写真です。

殺風景な県道に、色を添えてくれている赤い実は、勝手に出来たわけではありません。花とミツバチたちの共同作業の結晶です。

そういえば、私に養蜂を教えてくれた師匠のご自宅には、見事なクロガネモチが植えられていて、いつも綺麗に剪定されていました。いつか私の家にもクロガネモチの苗木を植えたいと思います^_^