再生への備忘録64

 昨日は、長野県茅野市でニホンミツバチを飼育している知り合いを訪ねて来ました。遠景に八ヶ岳連峰を臨む蜂場で楽しくミツバチ談義をし、越冬中のニホンミツバチ一群と、いろんな工夫が施された巣箱やスズメバチ対策用の付属品をもらって帰って来ました。

 知り合いの養蜂家は、年齢が80歳を超えていますが、非常に聡明な方で、私は言葉を聞き逃さないように、ずっと話を聞いていました。ミツバチ談義は、そのまま政治や経済の話に繋がり、この混沌とした時代をこれからどう生きてゆくかという話に発展してゆきました。養蜂の世界は全てに繋がります。

 茅野からの帰り道、渋滞の無い、上りの中央自動車道。平成が終わり、既に新しい時代が始まっているという、大きな潮目の変化を、いまどれだけの人が、実際に肌で感じているのだろうかと考えていました。

 今年はいくつかのエポックメイキングな出来事がありましたが、歴史が証明しているように、多くの人は、時代の変化に無頓着で、過去に執着し、流れに抵抗しているように思えて仕方ありませんでした。新しい時代の幕開けというものを、実際に肌で感じ取るというのは、その時代の境目に生きている人にとって、容易ではありません。過去を捨てなければ、新しい風を感じる事が出来ないからです。今年も残り3日。本腰を入れて断捨離しなければなりません^_^

再生への備忘録63

 波乱の1年も終わりに近づき、養蜂もシーズンオフになりました。シーズンオフの時期こそ、ゆっくりと内省したり、本を読んだりと、ヘンリーソローの「森の生活」のような暮らしをしたいといつも夢みているのですが、現実的にはそうはいきません。壊れた巣箱を修理したり、自分のアイデアを盛り込んだ巣箱の図面を引いたり、やる事は山のようにあります。

 昨日は、県内に新しく出来たレストランに行って、新しいハチミツ商品の紹介をしてきました。老人介護施設と併設されたレストランはナチュラルな素材でシンプルにデザインされていて、清潔感があり、さまざまなこだわりの食材が置いてありました。新しい福祉のビジネスモデルを立ち上げ、地域貢献をしている会社と1つの取り組みができる事に感謝です。

 話は変わりますが、1948年にフランスで出版された、「Beekeeping for All」という本を再読しています。何度となく読み返する度に、何かしらの発見や気づきがあるのは大抵古典で、一冊の本を読みきるのに、多くの時間とエネルギーが必要なのも古典です。著者のAbbe Warreという修道僧は冒頭で、

Apiculture or beekeeping  is the art of managing bees with the intention of getting the maximum return from this work with the minimum of expenditure.

https://www.amazon.co.jp/Beekeeping-All-Abb-Mile-Warr/dp/1904846521

と言っています。この本を最初に読んだ時は、私が養蜂をやり始めて間もない頃で、「with intention 」という言葉に意識が向いておらず、読み飛ばしていました。今年最後に出会ったこの言葉は、来年に向けてのテーマとなりそうです^_^

再生への備忘録62

 先日つくば国際会議場で行われたシンポジウムで、いくつか重要なトピックがあり、時間をかけて自分なりに掘り下げているのですが、その1つが「dawinian black box」という概念です。環境にあったみつばちを育てるために、極力管理せず、自然淘汰の原則に従った養蜂を行うという考え方には、本質的なところで共感を覚えますが、いくつかの点で腑に落ちないところもあります。

 1つには、私が扱っているセイヨウミツバチは日本で進化してきた在来生物ではなく、アフリカ原産の外来種であり、もっと言えば、養蜂そもそものが、所謂「自然」の中に於いては不自然な営みであるからです。また、養蜂家は、家畜を扱っている以上、自然淘汰に任せるのではなく、生き物に対する責任を負う義務があると思うからです。

 自然農の世界でも再三議論されている事ですが、自然と非自然、自然と反自然の境界線はどこにあるのかを見定め、さらに、人間はそこで何をすべきなのかを真剣に考えていかなければ、前に進む事が出来ません。自分なりの自然観を持つ事は非常に大事です。

 ところで、先日来日したフランシスコ教皇は、2014年のバチカン科学アカデミーで、ビッグバンと進化論を肯定し、創世記に書かれている世界観と対立しないと発言して、一部の人に衝撃を与えました。何が自然で、何が非自然なのか?何が偶然で、何が必然なのか?最初に何かあったのか、それとも何もなかったのか?全てが二元論で語られるこの三次元の世界で、この命題にどうすれば答えを出せるのでしょうか^_^

再生への備忘録61

 昨日は会社の役員が集まっての全体会議。全体会議と言っても、社員は私を含めて3人。全員が取締役です。会議はいつものように中目黒の南インドレストランで行い、つくば国際会議場で行われたミツバチサミットの総括と、来年公開するホームページの制作打ち合わせをしました。

 ホームページ制作に限らず、「モノ作る」というのは、その過程において多くの学びがあります。養蜂巣箱を作ろうと思ったら、ミツバチの事だけでなく、材木の事や、木工機械の事も知らなければなりません。ホームページもしかりで、企業の情報を発信しようと思ったら、自分達自身の事をきちんと知る必要があります。

 企業にはそれぞれ、起業に至るストーリーがあり、理念があります。何がやりたくて、何がやりたくないのかという意思があります。社会をどうしたいのかという明確なメッセージがあります。それを1つ1つ確認し、言語化する作業が、全て学びとなっています。

 今年もいよいよ残り2週間を切りました。激動の時代に突入する前夜、個人や企業がどう生きてゆくのか、各自が自問自答しなければなりません。

再生への備忘録60

 今年の9月からホームページを作っています。それは、ハチミツを販売する事を目的としたものではなく、養蜂に関わる活動を発信する為のウェブサイトです。また、パソコンからよりむしろ、スマホからアクセスしやすい作りを意識しています。

 インターネットへの常時接続が当たり前の現代に於いて、何がリアルで何がバーチャルなのか分かりにくくなっています。無数の情報が渦巻いているように見えるインターネットの世界も、大きな流れは、グローバル企業の、「ある種の」思惑によってコントロールされています。

 ところで、私は長い間、アナログの世界だけを信じていた人間ですが、最近は考え方が変わってきました。ある時、人間が創りあげたインターネットの情報伝達のシステムが、ミツバチのコロニーや、人間の脳のシナプスのように、有機的なものに思えたからです。

 リアルとバーチャル、アナログとデジタルの境界線が曖昧になり、もはや人間の五感だけを頼りに生きていくことができない時代になりました。今年も残すところあと2週間。第六感(sixth sense)をしっかりと覚醒させなければなりません。

再生への備忘録59

 昨日は、東京にて、来年使う巣箱の設計打ち合わせ。ミツバチにとって快適な居住空間を作るために、打ち合わせには、落葉樹の植樹をやりながら里山再生をしているNPO法人の方や、茶箱などの箱物作りを得意としている30代の木工職人が交わり、白熱した議論が展開されました

 ところで、現在日本で使われている、西洋ミツバチの巣箱は、1900年代に、渡辺寛氏(現渡辺養蜂場の創始者)がアメリカから導入した「ラ式(Langstroth hive)」と呼ばれる枠式巣箱が元となっていますが、世界には、実に様々な養蜂巣箱があり、素材や形、大きさなど、千差万別です。

 ラ式(ラングストロース式)、ローズ式、ナショナル、ジャンボなどの近代的な巣箱から、100年前にフランスの修道僧が作った「ワレ式巣箱(warre hive)」、「横置き巣箱(horizontal hive)」、「藁で作った巣箱(skep)」など、巣箱には、養蜂家の思想やアイデアが詰まっています。

 巣箱の設計や製作には、養蜂やミツバチの事以外にも、材木や製材に関わるあらゆる事や、箱作りや建築的な知識も必要です。また、養蜂を業としてやっている以上、コスト計算を無視するわけにはいきません。来年は坊ノ内養蜂園が開業して10年目になりますが、これから作る巣箱には養蜂園のコンセプトが反映される事になります^_^

再生への備忘録58

 つくば国際会議場で3日間行われていた「ミツバチサミット」。最終日の昨日は、私が関わっている養蜂プロジェクトのメンバーの若手養蜂家と一緒にシンポジウムを聴講したり、ポスター展示を見たりしました。

 シンポジウムでは、バロア耐性を持つ女王蜂の系統選抜の手法や、プロポリス、ローヤルゼリーの新しい知見など、興味深い演題を聴講する事が出来ました。また、ポスター展示では、大学と行政がコラボして取り組んでいる農福連携事業が目を引きました。アフリカの養蜂支援団体の方とは、プリミティブなケニア式巣箱の知られざる実態(笑)を聞く事ができました。

 話は脱線しますが、お金に興味がない、あるいはお金を使わない人にとって、紙幣は単なる紙であり、本は読まなければ、ただのモノです。絵画や彫刻も、そこに何も感じなければ、やはりただのモノに過ぎません。最新の情報も、科学的知見も、注意や関心を向けなければ、何の意味を持ちません。情報に意味があるかないか、全ては自分の意識の問題です。

 午前中でシンポジウムは終わり、午後は高校時代の友人と会食をしながら、いつものようにミツバチ談義と、新しいプロジェクトの打ち合わせをしました。その中で彼は「巣門の前のミツバチの出入りをよく観察する事こそが重要だ」と言っていましたが、この言葉を聞けた事が、私にとって最大の収穫でした^_^

再生への備忘録57

 昨日はミツロウのキャンドル作りワークショップにゲストとして参加してきました。越冬前に使わなくなったミツバチの巣を精蝋して作ったミツロウを使ってキャンドルを作るワークです。参加者の方々は、楽しくおしゃべりをしながら、ゆっくり流れる時間を楽しんでいました。

 ワークの終わりに、部屋の明かりを落とし、出来上がったキャンドルに火を灯しました。参加者の方々は、キャンドルのちいさな光を囲むように座り、私はその真ん中に立って、一人一人に語りかけるように、ミツバチとミツロウの話をしました。

 ミツロウで作ったキャンドルの光は、焚き火の光や夕焼けの光と同じく、やや赤みがかっていますが、このような長波長の光は、人間の意識を覚醒から内省へとシフトさせます。1日の終わりに内省し、自分と向き合うことの大切さを伝える事が話のテーマでした。

 キャンドルの光を眺めながら、自分自身と会話する時間は尊い時間です。外に向かっていた意識は穏やかに沈静化し、徐々に自己意識へと向かっていきます。エゴは薄れ、すべてを受け入れられるようになります。そして、自己意識に目覚めた人には、まるで焚き火の光のように人が集まり、人を癒してゆく事ができます。それがミツロウの光のマジックです^_^

再生への備忘録56

 昨日は、つくば国際会議場で行われている「ミツバチサミット」に参加してきました。ミツバチサミットは、2017年に第1回目が開催され、今年で2回目の開催になりますが、学術的で専門的なシンポジウムだけでなく、子供向けのイベントや、はちみつに関心がある一般の方向けの展示などもあります。もし、興味があれば、是非足を運んでみてください。今週の日曜日まで開催されています。

 私は、昨日夕方から行われた「世界各地の養蜂事情」というシンポジウムの中で、3人の演者の1人として発表をしました。いま、世界で行われているグローバル企業の養蜂プロジェクトを紹介した上で、企業のCSR活動(corporate social responsibility)が、社会的価値と経済的価値の双方を生み出し、現代が抱える環境問題などの社会問題の解決につながってゆくという内容でした。

 日本でCSRというと、単純に「CSR=社会貢献」だと認識されていて、「企業の本業とは関係がない、義務として追加的に実施されるもの」と思っている経営者が依然として多い気がします。その認識を変えるのが今回の演題の目的でした。

 海外のCSR先進企業は、経営者や従業員だけでなく、顧客や地域のコミュニティ、NPOや一次生産者といった社外の人々とも積極的に連携し、環境や社会の持続可能性に貢献しているだけでなく、中長期的に、利益を生み出す仕組みを構築しながら、企業自身の持続可能性を模索しています。次回のミツバチサミットでは、日本の企業が行う、「ミツバチ目線の」CSR活動を発表できるように、取り組みを推進していきたいと思います。

再生への備忘録55

 昨日は、はぁもにぃ養蜂部の活動日でした。利用者さんの送迎はいつも妻がやっているのですが、昨日は都合で私が送迎でした。利用者さんは、私が方向音痴であることを良く知っていて、運転中は、あれこれと指示を出してくれましたが、ナビゲーションの指示と違う指示を出すので私はパニックになりました。「船頭多くして船山に登る」という状態です。

 ところで、私の友人は、方向感覚がある人と、全くない人に2分されますが、パートナーとなる人は、総じて方向感覚があり、友達となる人は総じて方向音痴です。方向音痴の人は私を含め、目的地に着く事を目的とせず、体験こそを人生の目的としているからかもしれません。

 右に行けば右の体験があり、左に行けば左の体験がある。それだけの事です。自分が選んだ道を行った、その結果が目的地であったという、ただそれだけのことです。最初に定めた目的地など、出発するための大義名分に過ぎません。

 いま、目の前に2つの道があると示されました。どちらの道を進めば、ワクワクするような体験が出来るのか、そればかりは、誰もナビゲートしてくれません。自分自身に聞くしかありません。ワクワクする道を選択し続けた結果、辿り着くであろう場所が、人生の目的地です^_^

Bees for Development JOURNAL